人を泣かすプロ!泣語家『泣石家 霊照』の泣語(第1演目:「祖父の腕」)

2016/6/5 | 3,095 PV |

泣ける・感動

 
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※泣語家(なくごか)とは、「泣ける話」に特化した全く新しいプロの”噺家”です。
 

「祖父の腕」

純一の祖父はとてもひょうきんな人でした。 時代劇を見ていては物真似をし、祖母に小言を言われてはその顔真似をよく見せてくれました。 純一はそんな祖父が大好きでした。
 

祖父には口癖がありました。 たまに思い出したかのように 「どうや、面白いか?」 と聞いてくるのです。
それが、今言った冗談についてなのか、それとも現在の人生そのものについてかはわからないのですが、純一はその度にきまって 「うん、面白いよ」 と答えました。
その答えを聞くと、祖父は満足そうに微笑みながら 「うん、うん」 と、2度うなずきました。
 

純一が9歳の頃、埼玉県東武動物公園のローラーコースター「クレイジーマウス」に乗りました。 小さいながらも1回転するコースターで、ループの直径は8m。純一は宙返りをするコースターが怖くて仕方なく、乗るのは一大決心でした。
 

ジェットコースター

出典:photo-ac

 

一緒に乗る祖父はことあるごとにいつもの調子で純一を怖がらせました。
「ほらほら見てごらん、逆さになっているよ!」
「これはしっかりつかまってないと大変だ、落ちそうだ!」
「うわーみんな、悲鳴がすごいな!」
 

祖父にとっては、いつもの冗談と同じく孫とのたわいのないコミュニケーションでした。 しかし、すでに恐怖に飲み込まれている純一にとっては、たまったものではなく、 祖父が一言発するたびに怖さが増し、祖父の腕にしがみつく手に「ギュッ」と力が入りました。
「おじいちゃんはなんで、怖がらせることばかり言うのだろう」 と、純一は怒りを抱き始めました。
 

列の先頭が近づくにつれて、純一のドキドキも最高潮になりました。
「今なら引き返せる…まだやめられる…」。
 

純一の恐怖心に反して、祖父はニコニコと相変わらず軽口をたたきます。
「いやーすごい、スピードだな、迫力あるな。怪物列車と名付けよう!」。
純一のイライラは募りました。
 

そして、とうとう二人は列の先頭になりました。もう後には引けません。
純一はコースターに乗車するとすぐに目をつぶり、時が過ぎることだけを願いました。その間も祖父の腕はしっかりと掴んでいました。 それから、コースターはアッという間に宙返りを終え、元の位置に戻りました。
 

「凄いな!乗れたじゃないか!勇気があるな!」
乗り終わると、祖父が笑顔で話しかけてきました。
緊張から解放された純一は安心し、祖父への怒りも忘れてしまいました。
「うん、全然平気だったよ!」 誇らし気に、そう答えました。
 

ふと、純一は祖父が腕をさすっているのに気が付きました。
よく見ると祖父の腕には、何本か赤い筋が浮いていました。
それが血だと理解するのに少し時間がかかりました。
恐怖にすくんだ純一の心は、鋭い爪となって、祖父の腕に当たり散らしていたのです。
 

ずっと、ずっとすがり続けた腕。 頼もしく、支えになった腕に自分が傷をつけていた…。
 
 

そんな純一に祖父が取った行動とは?
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