「注文しなくていいから…」 寒空の下で待ち合わせする女性を店に招き? By - grape編集部 公開:2021-01-08 更新:2021-01-08 いい話コーヒー Share Tweet LINE 横殴りに雪が叩きつけてくる吹雪の日には思い出す。私がまだ「お嬢さん」と呼んで頂けていた年齢の、携帯電話が世の中にまだ無い頃。 買い出しに行ったデパート前で待ち合わせているが、家族は来ない。待てど暮らせど、来ない。 吹雪の中震えながら立っている私にデパート横の珈琲店のマスターが — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 「お嬢さん、もう長い時間待ってるみたいだけど大丈夫?良かったらお入り。寒いでしょ?」と声を掛けてくれた。 そりゃもう、寒くて。身体の芯まで凍えていたから「注文しなくていいから、とにかく入って温まったら?」の有り難いお言葉を拒むなんて出来なくて。 お客さん居ないからそこ座って、 — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 と言われるままカウンター席に座り、暖かくて人心地がして、ほっとした。 「珈琲飲める?まだ飲んだこと無いか」秘境育ちの私にとって珈琲とは砂糖ミルクを入れたインスタントか、コーヒー牛乳のことだった。 「本物は飲んだこと無いです」「飲んでみる?」「お金を持っていないので…」 — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 「そんなのいいよ。こんなに寒くちゃお客さん来ないし。珈琲の淹れ方を教えるから、覚えて帰ってよ。待ち合わせの人が来たらすぐ分かるようにドアは開けておくから」 マスターは私の目の前でドリップのやり方を見せてくれた。まず蒸らすこと。細かい泡が出るようにお湯を注ぐこと。 — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 目の前で落ちていく珈琲の色のなんと深いこと。角度によって光り方が違い、こんなに綺麗なものなのかと感動した。 「飲んでみて。人生初のドリップ珈琲。まずは砂糖もミルクも入れないで」 恐る恐る口にした、何も入っていない珈琲。 「…甘い!…えっ?美味しい!」「美味しいでしょ。それが — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 本当の珈琲の味なんだよ」 それまで飲んでいたインスタントコーヒーはどれだけ砂糖やミルクを入れても苦い、としか感じなかったのに。 何だこれ~!全く別の飲み物じゃないの! 凍えきっていた手も温かいカップで温まり頂いた珈琲は美味しくて夢のような時間だった。 「美味しいんだよね、 — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 これ。ブルーマウンテンっていう種類」当時のお金で1杯600円…ひえ~っ「そんな高価なもの…!家族が来たらお支払いします」「いいの。僕が淹れたかったんだから。お客さん来ないから暇でさ。それに、珈琲好きな人を増やすのが楽しいんだよ」 こんな出会いをしたら珈琲好きになりますとも! — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 渋滞に巻き込まれ予定より1時間以上遅れて到着した母は「ぽんたは生真面目だから今頃吹雪の中雪ダルマになっているんじゃないかと心配していた」と言い、父は「どこかで何とか凌いでいるだろうと思っていた」と言った。 凌いでました。素敵な出会いがあったよ。遅れてきてくれてありがとう。 — ぽんた (@Pontamama12345) January 6, 2021 1 2 3 出典grape/@Pontamama12345 Share Tweet LINE