『孤独死』の現実をミニチュアに 遺品整理業者の想いに考えさせられる By - grape編集部 公開:2021-03-27 更新:2021-03-27 ミニチュア遺品整理業 Share Tweet LINE 孤独死の原因の1つは「我関せず」な現在社会? 小島さん 今って、特に都会のマンション住まいだと、隣に誰が住んでるのか分からないことが多いじゃないですか。 ゴミ出しの時に顔見知りになった人が「最近はあの人を見てないけど、どうしたんだろう?」って様子を見に来てくれたら一番いいんですけど…。 『他人を気にしてくれる、ちょっとおせっかいな人』って現代社会に必要だと思います。 いとう 自分は一人暮らしをしていた経験があるのですが、防犯上の理由で引っ越しの挨拶はしませんでした…。 時々生活音が聞こえてくるくらいで、そのまま一度も隣人の顔を見たことがなかったので、もし隣の部屋で亡くなっても気付けなかっただろうな…と。 小島さん 高齢者の一人暮らしだと、ヒートショック(※)が死因のパターンも多いです。 防ぐことができたはずなのに、わざわざ便座を温めるためのコンセントを抜いていた人もいるんですよ。 いとう 「第一発見者になりたくないから」という理由で、異変を察してもあえて無視をする人もいるそうですね。 そこまで他人に関わりたくないというか、無関心な社会になってしまっているのは悲しいですね…。 小島さん 孤独死は、虫の発生や異臭で近隣住民が不審に思うか、管理会社に「やたらとハエが我が家に入ってくる」ってクレームが来て発覚するパターンが大半ですね。 浴槽でのヒートショック。追い炊き機能を使ったままだと腐敗の進行が早い トイレでのヒートショック。便座を温めるためのコンセントは抜かれている 小島さん 以前あったケースでは、その時餓死寸前だった故人が、管理人に向けた助けを求める手紙を玄関ドアの下に差し入れていたんですよ。 管理人は同じフロアに住んでいたので、手紙に気付いていたんです。でも、助けなかった。 いとう ええ…どうして…。 「そこで見て見ぬふりをしなければ、助けることができた命かもしれないのに」と、どうしても思ってしまいますが…。 小島さん 加えて、隣人も異変には気付いていたんですって。でも、スルーしちゃう。 知らないふりをした理由を聞いたら「しょせんは他人だから、踏み込めないのは仕方がない」と。 管理人にも「住人には平等に接しなければならないから、この人だけを優遇することはできない」っていわれてモヤモヤしましたね…。 「若いから、元気だから大丈夫」ということはない いとう 生きていれば必ずいつか死は訪れるものなのに、なぜか孤独死に対して当事者意識のない人がとても多い印象があって。 ほとんどの人にとって死は恐怖の対象なので、目を背けたい気持ちは分かるんですけれども…。 いとう 世間は孤独死する人に対して、高齢者で、お金がなくて、身寄りがない人…というイメージを持っているように感じています。 ですが、近年は若者のセルフ・ネグレクト(※)が社会問題として話題になっていますよね。 小島さん セルフ・ネグレクトの代表が、いわゆるゴミ屋敷ですね。 ゴミ屋敷のミニチュアを見た人って、大半が「自分はこうはならない、大丈夫」っていうんですよ。 小島さん でも「自分は平気」と思わず、ちょっと考えてみてほしくて。 今は普通に掃除ができていても、職を失ったり恋人と別れたり、大切な人を亡くしたり…。 あと、いじめを受けたり仕事でうつになったりと、そういう出来事がきっかけで突然生きる気力がなくなって、ゴミ屋敷の住人になっちゃうので。 天井までゴミが積みあがっていることも珍しくないという 亡くなった場所にはタブレット端末があるが、助けを呼ぶ気力すら消え失せてしまう ゴミの中には、尿の入ったペットボトルが散見される ゴミ屋敷には、ポストインされるマグネット広告が貼られていることが多いという 小島さん 確かに60代以上の人と比べたら少ないですけど、若い人が孤独死するケースも結構あって。 夏にトイレで練炭自殺を試みて失敗した若い人が、その晩にビールを飲んで寝たら熱中症で亡くなった…という現場もありました。 あと、若い人って年齢を過信していて、夜更かしや不摂生な食生活をするんですよ。 いとう 「若いから」「今は健康だから」といって、絶対に大丈夫なんてことはないですよね。 孤独死やゴミ屋敷に陥った方も、「まさか自分がそうなるなんて」という気持ちだったと思うんです。 小島さん 私もそうですけど、今は正常でも、いつ、何がきっかけで生きる気力を失ってしまうかは分からないですし…。 なのに、みんな「自分は大丈夫!」っていってるので「そんなことないよ!」という話をするんですけど、なかなか伝わらないんですよね。 大量の害虫が湧いているゴミ屋敷。家主はそれすら気にならなくなっている 食べかけのドーナツやピザ、ファストフードが放置されている 小島さん ゴミ屋敷がモチーフのミニチュアは、見やすさを重視して、これでもゴミの量を減らしています。 たまに、ゴミ屋敷のミニチュアを見た若い人から「うわ!俺の部屋にそっくり!(笑)」っていわれることがあるんですけど、「いや、それは危機感を持たないとまずいですよ」って思います。 いとう 若い人の孤独死というと、自殺も多いと聞きます。 小島さんの作品に自殺がモチーフの部屋がありますが、ビニールシートを敷いて、最期まで迷惑をかけないようにする描写に胸が痛みました。 首を吊った縄の下には、ビニールシートが敷かれている 壁には「ゴメン」。卓上には遺書と『人間失格』『人は死んだらどうなるのか』の2冊が 小島さん 自殺の場合は比較的、男性が多いですね。 従来の孤独死とは異なり、命を絶つタイミングを自分で選んでいるので、遺品はほとんどないケースが多いです。 生き延びたペットを「殺処分して」という遺族 次のページへ 1 2 3 出典grape Share Tweet LINE
孤独死の原因の1つは「我関せず」な現在社会?
今って、特に都会のマンション住まいだと、隣に誰が住んでるのか分からないことが多いじゃないですか。
ゴミ出しの時に顔見知りになった人が「最近はあの人を見てないけど、どうしたんだろう?」って様子を見に来てくれたら一番いいんですけど…。
『他人を気にしてくれる、ちょっとおせっかいな人』って現代社会に必要だと思います。
自分は一人暮らしをしていた経験があるのですが、防犯上の理由で引っ越しの挨拶はしませんでした…。
時々生活音が聞こえてくるくらいで、そのまま一度も隣人の顔を見たことがなかったので、もし隣の部屋で亡くなっても気付けなかっただろうな…と。
高齢者の一人暮らしだと、ヒートショック(※)が死因のパターンも多いです。
防ぐことができたはずなのに、わざわざ便座を温めるためのコンセントを抜いていた人もいるんですよ。
「第一発見者になりたくないから」という理由で、異変を察してもあえて無視をする人もいるそうですね。
そこまで他人に関わりたくないというか、無関心な社会になってしまっているのは悲しいですね…。
孤独死は、虫の発生や異臭で近隣住民が不審に思うか、管理会社に「やたらとハエが我が家に入ってくる」ってクレームが来て発覚するパターンが大半ですね。
浴槽でのヒートショック。追い炊き機能を使ったままだと腐敗の進行が早い
トイレでのヒートショック。便座を温めるためのコンセントは抜かれている
以前あったケースでは、その時餓死寸前だった故人が、管理人に向けた助けを求める手紙を玄関ドアの下に差し入れていたんですよ。
管理人は同じフロアに住んでいたので、手紙に気付いていたんです。でも、助けなかった。
ええ…どうして…。
「そこで見て見ぬふりをしなければ、助けることができた命かもしれないのに」と、どうしても思ってしまいますが…。
加えて、隣人も異変には気付いていたんですって。でも、スルーしちゃう。
知らないふりをした理由を聞いたら「しょせんは他人だから、踏み込めないのは仕方がない」と。
管理人にも「住人には平等に接しなければならないから、この人だけを優遇することはできない」っていわれてモヤモヤしましたね…。
「若いから、元気だから大丈夫」ということはない
生きていれば必ずいつか死は訪れるものなのに、なぜか孤独死に対して当事者意識のない人がとても多い印象があって。
ほとんどの人にとって死は恐怖の対象なので、目を背けたい気持ちは分かるんですけれども…。
世間は孤独死する人に対して、高齢者で、お金がなくて、身寄りがない人…というイメージを持っているように感じています。
ですが、近年は若者のセルフ・ネグレクト(※)が社会問題として話題になっていますよね。
セルフ・ネグレクトの代表が、いわゆるゴミ屋敷ですね。
ゴミ屋敷のミニチュアを見た人って、大半が「自分はこうはならない、大丈夫」っていうんですよ。
でも「自分は平気」と思わず、ちょっと考えてみてほしくて。
今は普通に掃除ができていても、職を失ったり恋人と別れたり、大切な人を亡くしたり…。
あと、いじめを受けたり仕事でうつになったりと、そういう出来事がきっかけで突然生きる気力がなくなって、ゴミ屋敷の住人になっちゃうので。
天井までゴミが積みあがっていることも珍しくないという
亡くなった場所にはタブレット端末があるが、助けを呼ぶ気力すら消え失せてしまう
ゴミの中には、尿の入ったペットボトルが散見される
ゴミ屋敷には、ポストインされるマグネット広告が貼られていることが多いという
確かに60代以上の人と比べたら少ないですけど、若い人が孤独死するケースも結構あって。
夏にトイレで練炭自殺を試みて失敗した若い人が、その晩にビールを飲んで寝たら熱中症で亡くなった…という現場もありました。
あと、若い人って年齢を過信していて、夜更かしや不摂生な食生活をするんですよ。
「若いから」「今は健康だから」といって、絶対に大丈夫なんてことはないですよね。
孤独死やゴミ屋敷に陥った方も、「まさか自分がそうなるなんて」という気持ちだったと思うんです。
私もそうですけど、今は正常でも、いつ、何がきっかけで生きる気力を失ってしまうかは分からないですし…。
なのに、みんな「自分は大丈夫!」っていってるので「そんなことないよ!」という話をするんですけど、なかなか伝わらないんですよね。
大量の害虫が湧いているゴミ屋敷。家主はそれすら気にならなくなっている
食べかけのドーナツやピザ、ファストフードが放置されている
ゴミ屋敷がモチーフのミニチュアは、見やすさを重視して、これでもゴミの量を減らしています。
たまに、ゴミ屋敷のミニチュアを見た若い人から「うわ!俺の部屋にそっくり!(笑)」っていわれることがあるんですけど、「いや、それは危機感を持たないとまずいですよ」って思います。
若い人の孤独死というと、自殺も多いと聞きます。
小島さんの作品に自殺がモチーフの部屋がありますが、ビニールシートを敷いて、最期まで迷惑をかけないようにする描写に胸が痛みました。
首を吊った縄の下には、ビニールシートが敷かれている
壁には「ゴメン」。卓上には遺書と『人間失格』『人は死んだらどうなるのか』の2冊が
自殺の場合は比較的、男性が多いですね。
従来の孤独死とは異なり、命を絶つタイミングを自分で選んでいるので、遺品はほとんどないケースが多いです。
生き延びたペットを「殺処分して」という遺族