「どういう状況?」 大学内でヤギと見つめ合う女子大生 横浜国大の『珍部活』を覗いてみた By - grape編集部 公開:2023-06-22 更新:2023-06-22 ヤギ動物大学大学生横浜市 Share Tweet LINE 教養を身につけたり、専門分野の研究をしたりするだけでなく、さまざまな活動を通して大切な学びが得られる、大学。 大学には、学生が中心となって取り組める、多種多様な部活動やサークル活動があります。 誰もが知っているようなスポーツ系や文化系サークルがあれば、中には活動内容が想像しづらい『謎部活』もあるでしょう。 横浜国立大学の『メ~部活』が気になる! 神奈川県横浜市保土ヶ谷区にある、『横浜国立大学』(以下、横国大)。横浜の中心地から少し離れた場所にあり、東京ドーム9個分にも値するという広大なキャンパスは、自然豊かで地域の人たちも訪れる憩いの場になっています。 そんな横国大で近年じわじわと話題になっているのが、『ヤギ部』です。 ウワサによると、『ヤギ部』の部員が時折、キャンパス内でヤギを散歩させているとか…。一体どんな活動をしている部活なのでしょうか。 気になりすぎるので、早速現地に行ってみました! 訪れたのは5月の下旬。 新緑がまぶしいキャンパスの中を歩き、代表の学生さんとの待ち合わせ場所に向かうと、建物の前が広場のような開けている場所に着きました。 そこに現れたのは…。 本当に、ヤギがいたー!! 紐で囲われた敷地の中で、ヤギが2頭、草をムシャムシャ食べていました。近くで見ると、「ヤギはこんなに大きかったのか」と、そのサイズ感にびっくりします。 横国大では、2020年より学内の研究プロジェクトの一環でヤギを飼育しており、有志の学生たちが『ヤギ部』として日々ヤギの世話をしているのです。 この時はちょうど、ヤギたちの出張除草の時間。草を食べている間に、『ヤギ部』の活動について、部員の学生さんたちに詳しくお話を聞きました。 『ヤギ部』とは 今回インタビューをさせてもらったのは、3年生のイイダさん、オウさん、モリタさん、そして1年生の新入部員、コマツさんです。 左から、イイダさん、オウさん、モリタさん、コマツさん まずは、『ヤギ部』のTwitterを運営している、代表のイイダさんに活動の概要について伺いました。 ――『ヤギ部』とは? イイダさん 『ヤギ部』は、都市科学部環境リスク共生学科の小池文人教授の研究プロジェクトです。 ヤギを飼育し、キャンパス内の雑草を食べさせて除草をすることで、うっそうとしていた場所の視界が開け、繁殖力の強い植物や外来種を抑制する効果があります。 ――2020年スタートということは、割と新しい活動? イイダさん そうですね。ヤギ部はコロナ禍で始まった活動なんです。 キャンパスに人が立ち入らなくなったことで、植物がうっそうと茂ってしまう場所が増えて、その管理が必要でした。 それだけでなく、オンライン中心となり対面授業がない学生たちに、交流の機会や癒しを提供する目的もあったそうです。 ――ヤギは全部で何頭いるの? イイダさん 今は、メスの2頭を飼育しています。ヤギたちは、専門の会社からレンタルをしているんです。 これまでは、秋冬のシーズンだけヤギの除草をしていて、春夏はいなかったのですが、2023年度は初めて春の除草も行うことになりました。 毎回違う子が来ていて、この子たちは6月末に帰ってしまうんですよ。 2023年6月現在に飼育している2頭、左から『さんご』と『よんよん』 ――『ヤギ部』に参加する学生は、具体的にどんな役割を担っているの? イイダさん 学生メンバーは、持ち回りでヤギのお世話をしています。具体的には、普段ヤギたちが過ごしている小屋に行って水を取り替えたり、おやつをあげたり、ヤギの観察用に備え付けられたカメラバッテリーを交換したりなどです。 最低でも1日1回は誰かが世話をして様子を見るようにしています。 ヤギが普段過ごしている小屋でお世話をする様子 体調確認も部員の大切な仕事の1つ。フンの状態や、外で飼育しているので、ケガをしていないか、いつもと何か違う様子はないかなどをチェックしているといいます。 実際にヤギと触れ合ってみた 除草エリアでの、ヤギによる除草は週3回実施しているとのこと。 除草中、ほかの学生さんや地域の人たちが通ると、「かわいい~!」とスマホで写真に収めていました。 近くには保育園もあるので、お散歩中の園児がヤギを見に来ることもあるそうですよ。 「今回はせっかくなので特別に」…ということで、ヤギさんに触らせてもらいました! 初対面なのに、近付くとフレンドリーに体を寄せて、なでさせてくれた、ヤギの『よんよん』。 ちょっぴりカールした毛がキュートすぎます…! ――あまり、においはしないんですね。 イイダさん そうですね。ほかの家畜と比べて、毛が短いこともあるかもしれません。 あと、ヤギは地面が乾燥した場所を好むというのも、関係しているのかもしれませんね。 ――これは今、何を食べているの? モリタさん ここでは『セイタカアワダチソウ』をよく食べていますね。 上の柔らかい葉を食べていくので、ヤギが除草したところは、草の背丈が低くなって、下のほうまで日の光が入るんです。そうすると、ほかの植物が増えて、生態系の多様性の回復にもつながるんですよ。 ヤギがよく食べる『セイタカアワダチソウ』 ――ヤギに雑草の好き嫌いはある? イイダさん ドングリが大好きで、ぼりぼり食べています!けっこう固いものも大丈夫で、外来種でヤシ科の『シュロ』の葉っぱも、先生が切り倒したものを食べますよ。 あとは、マメ科の植物が好きですね。マメ科は窒素が多いので。 ――窒素が多いとなぜよく食べるの? イイダさん ヤギも牛と同じく胃が4つある動物で、お腹の中で発酵させて消化をしています。 その発酵に窒素と炭水化物が必要で、バランスを取るために、必要なものを食べているようです。 ヤギが除草するエリアは、季節に応じて変えているとのこと。 除草した場所は、笹など繁殖力の強い植物の勢いが収まり、異なる植物が成長するなど、目に見える違いがあるといいます。 部員以外がヤギに触るのはダメ ――ちなみに、部員じゃなくてもヤギと触れ合えるの? イイダさん ヤギの健康や口蹄疫のリスクを考えて、飼育員以外は紐で囲った区域に立ち入らないようにお願いしています。 あと、勝手にエサを与えるのもNGです。人間の食べ物や雑草の中にも、ヤギには有害なものがあるので。 遠くから見守ってもらえると嬉しいです。 除草エリアに掲出された貼り紙 見かけたら、区域の外から優しく見守ろう 大学祭で触れ合うチャンスがあるかも 横国大では5月と10月に大学祭を開催しています。 2022年の秋の大学祭では、除草地で触れ合える企画を実施。予約制でヤギと触れ合ったり、チェキで写真を撮ったりするイベントをしたほか、グッズ販売を行ったそうです。 2023年度もイベントを計画中とのこと。普段は部員以外が触れ合うことができないヤギですが、10月の大学祭ではチャンスがあるかもしれませんね。 ヤギについて、いろいろと詳しく教えてくれた部員のみなさん。 次のページでは、入部のきっかけやお世話でぶっちゃけ大変なことなど、『ヤギ部』の気になるアレコレを聞きました! どうして『ヤギ部』に入ったの? 次のページへ 1 2 出典grape Share Tweet LINE
教養を身につけたり、専門分野の研究をしたりするだけでなく、さまざまな活動を通して大切な学びが得られる、大学。
大学には、学生が中心となって取り組める、多種多様な部活動やサークル活動があります。
誰もが知っているようなスポーツ系や文化系サークルがあれば、中には活動内容が想像しづらい『謎部活』もあるでしょう。
横浜国立大学の『メ~部活』が気になる!
神奈川県横浜市保土ヶ谷区にある、『横浜国立大学』(以下、横国大)。横浜の中心地から少し離れた場所にあり、東京ドーム9個分にも値するという広大なキャンパスは、自然豊かで地域の人たちも訪れる憩いの場になっています。
そんな横国大で近年じわじわと話題になっているのが、『ヤギ部』です。
ウワサによると、『ヤギ部』の部員が時折、キャンパス内でヤギを散歩させているとか…。一体どんな活動をしている部活なのでしょうか。
気になりすぎるので、早速現地に行ってみました!
訪れたのは5月の下旬。
新緑がまぶしいキャンパスの中を歩き、代表の学生さんとの待ち合わせ場所に向かうと、建物の前が広場のような開けている場所に着きました。
そこに現れたのは…。
本当に、ヤギがいたー!!
紐で囲われた敷地の中で、ヤギが2頭、草をムシャムシャ食べていました。近くで見ると、「ヤギはこんなに大きかったのか」と、そのサイズ感にびっくりします。
横国大では、2020年より学内の研究プロジェクトの一環でヤギを飼育しており、有志の学生たちが『ヤギ部』として日々ヤギの世話をしているのです。
この時はちょうど、ヤギたちの出張除草の時間。草を食べている間に、『ヤギ部』の活動について、部員の学生さんたちに詳しくお話を聞きました。
『ヤギ部』とは
今回インタビューをさせてもらったのは、3年生のイイダさん、オウさん、モリタさん、そして1年生の新入部員、コマツさんです。
左から、イイダさん、オウさん、モリタさん、コマツさん
まずは、『ヤギ部』のTwitterを運営している、代表のイイダさんに活動の概要について伺いました。
――『ヤギ部』とは?
『ヤギ部』は、都市科学部環境リスク共生学科の小池文人教授の研究プロジェクトです。
ヤギを飼育し、キャンパス内の雑草を食べさせて除草をすることで、うっそうとしていた場所の視界が開け、繁殖力の強い植物や外来種を抑制する効果があります。
――2020年スタートということは、割と新しい活動?
そうですね。ヤギ部はコロナ禍で始まった活動なんです。
キャンパスに人が立ち入らなくなったことで、植物がうっそうと茂ってしまう場所が増えて、その管理が必要でした。
それだけでなく、オンライン中心となり対面授業がない学生たちに、交流の機会や癒しを提供する目的もあったそうです。
――ヤギは全部で何頭いるの?
今は、メスの2頭を飼育しています。ヤギたちは、専門の会社からレンタルをしているんです。
これまでは、秋冬のシーズンだけヤギの除草をしていて、春夏はいなかったのですが、2023年度は初めて春の除草も行うことになりました。
毎回違う子が来ていて、この子たちは6月末に帰ってしまうんですよ。
2023年6月現在に飼育している2頭、左から『さんご』と『よんよん』
――『ヤギ部』に参加する学生は、具体的にどんな役割を担っているの?
学生メンバーは、持ち回りでヤギのお世話をしています。具体的には、普段ヤギたちが過ごしている小屋に行って水を取り替えたり、おやつをあげたり、ヤギの観察用に備え付けられたカメラバッテリーを交換したりなどです。
最低でも1日1回は誰かが世話をして様子を見るようにしています。
ヤギが普段過ごしている小屋でお世話をする様子
体調確認も部員の大切な仕事の1つ。フンの状態や、外で飼育しているので、ケガをしていないか、いつもと何か違う様子はないかなどをチェックしているといいます。
実際にヤギと触れ合ってみた
除草エリアでの、ヤギによる除草は週3回実施しているとのこと。
除草中、ほかの学生さんや地域の人たちが通ると、「かわいい~!」とスマホで写真に収めていました。
近くには保育園もあるので、お散歩中の園児がヤギを見に来ることもあるそうですよ。
「今回はせっかくなので特別に」…ということで、ヤギさんに触らせてもらいました!
初対面なのに、近付くとフレンドリーに体を寄せて、なでさせてくれた、ヤギの『よんよん』。
ちょっぴりカールした毛がキュートすぎます…!
――あまり、においはしないんですね。
そうですね。ほかの家畜と比べて、毛が短いこともあるかもしれません。
あと、ヤギは地面が乾燥した場所を好むというのも、関係しているのかもしれませんね。
――これは今、何を食べているの?
ここでは『セイタカアワダチソウ』をよく食べていますね。
上の柔らかい葉を食べていくので、ヤギが除草したところは、草の背丈が低くなって、下のほうまで日の光が入るんです。そうすると、ほかの植物が増えて、生態系の多様性の回復にもつながるんですよ。
ヤギがよく食べる『セイタカアワダチソウ』
――ヤギに雑草の好き嫌いはある?
ドングリが大好きで、ぼりぼり食べています!けっこう固いものも大丈夫で、外来種でヤシ科の『シュロ』の葉っぱも、先生が切り倒したものを食べますよ。
あとは、マメ科の植物が好きですね。マメ科は窒素が多いので。
――窒素が多いとなぜよく食べるの?
ヤギも牛と同じく胃が4つある動物で、お腹の中で発酵させて消化をしています。
その発酵に窒素と炭水化物が必要で、バランスを取るために、必要なものを食べているようです。
ヤギが除草するエリアは、季節に応じて変えているとのこと。
除草した場所は、笹など繁殖力の強い植物の勢いが収まり、異なる植物が成長するなど、目に見える違いがあるといいます。
部員以外がヤギに触るのはダメ
――ちなみに、部員じゃなくてもヤギと触れ合えるの?
ヤギの健康や口蹄疫のリスクを考えて、飼育員以外は紐で囲った区域に立ち入らないようにお願いしています。
あと、勝手にエサを与えるのもNGです。人間の食べ物や雑草の中にも、ヤギには有害なものがあるので。
遠くから見守ってもらえると嬉しいです。
除草エリアに掲出された貼り紙
見かけたら、区域の外から優しく見守ろう
大学祭で触れ合うチャンスがあるかも
横国大では5月と10月に大学祭を開催しています。
2022年の秋の大学祭では、除草地で触れ合える企画を実施。予約制でヤギと触れ合ったり、チェキで写真を撮ったりするイベントをしたほか、グッズ販売を行ったそうです。
2023年度もイベントを計画中とのこと。普段は部員以外が触れ合うことができないヤギですが、10月の大学祭ではチャンスがあるかもしれませんね。
ヤギについて、いろいろと詳しく教えてくれた部員のみなさん。
次のページでは、入部のきっかけやお世話でぶっちゃけ大変なことなど、『ヤギ部』の気になるアレコレを聞きました!
どうして『ヤギ部』に入ったの?